だいたい47度

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「ハーモニー」と文明への猜疑

SF好きの友だちに勧められて伊藤計劃の「ハーモニー」を読んだ。

僕たちは文明の力によって生々しい人間の暮らしから離れて生活することができている。たとえば、身近に死を感じることもなく生活しているにもかかわらず、毎日肉食できることなどがその一端だ。この状態に対する座りの悪さを表すために、文明の力を増大させた近未来を描く展開は物語のひとつのモデルである。

「ハーモニー」も序盤はその方向で話が展開する。体内に埋め込まれたナノマシンが常に身体の状態を監視・修復してくれるため、病気や怪我がない世界。食事や仕事の管理を行う健康コンサルタントが個人ごとについているため、太っている者も痩せている者もおらず全員が同じ体格。体内ホルモンの異常分泌に関してもナノマシンが警告を出すので、感情の大幅な起伏はなく、人間は平穏・安静に暮らすものという空気が支配した世界。

この息苦しさを感じる世界の破壊を試みるのは、例によって境界人である少女たちだ。子どもでもなく大人でもない彼女らは、大人の世界に反目するために飢餓による自殺を図る……といったプロットが序盤の流れである。王道とはいえ世界観がよくできていて、ここまででも面白く読める。

しかし「ハーモニー」の本当の面白さはその後にある。文明の力によって物質世界を支配した現代社会と、その延長上にある自らの身体をも支配した未来社会。普通の小説では現代社会での物語が展開され、普通のSFでは未来社会での物語が展開される。それに対して「ハーモニー」では、文明支配の範囲が未来社会から更に一段進んだところが物語の中心となる。SF世界の更に未来、言ってみればSF世界の中でのSFが描かれる。

文明の支配は究極的にはどこを目指すのか。そしてその結果は人間にとって幸福なものなのか。現代ですら感じる文明発展への懐疑は何を予感しているのか。「ハーモニー」はその結論のうちの一つを明確に示した。


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(2008/12)
伊藤 計劃

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