だいたい47度

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空気に支配されないために人の愚かさを知る 「赤めだか」

落語家・立川談春の「赤めだか」を読んだ。談春が立川談志に弟子入りするところから真打になるところまでを綴ったエッセイだ。落語家というのは文章運びもうまいのだろうか、何度か声を出して笑ってしまった。

「落語は人間の業の肯定」と立川談志は言った。人間は愚かで自分勝手でいい加減なもんだが、それを認めてやるのが落語だと。「赤めだか」に描かれる弟子時代の談春も実に適当だ。褒められれば調子に乗り、辛ければサボり、大事な日に限って寝坊する。ただそれでも本人は真剣にやっていることが伝わってくるから面白い。赤めだか自体が「人間ってそういうもんだよね」と笑わせてくれる落語らしいお話だ。

落語の世界において、師匠と弟子は主人と召使のような関係だ。弟子は師匠に絶対服従というのが不文律となっており、家の掃除や買いものといった雑用も弟子の仕事となっている。師匠がカラスが白いといえば白いと考えなくてはならない世界なのだ。それを認識してまで弟子入りしたいのだから、落語の師匠というものはとても魅力的な人物なのだろう(少なくとも弟子たちにとっては)。

そこから考えると当然だが、赤めだかに描かれている立川談志は魅力的だ。彼はイエモトという空気に支配されることもなく、ひたすらに自分の言葉で語る。空気を読めるが、空気に流されない。談志の家で一門が飲み会をしている中、ふとしたことから弟子の一人(真打)が談志に噛み付いたときのこと。

「私は、私は……」
真打は全身をふるわせながら絶叫した。
「夢金だったらいまの師匠より私の方が上手い」

こんな場合の談志は怖いくらいに冷静だ。瞳の形すら変わらないように見える。
弟子の分際で師匠に向かって無礼なとか、酔った上での話だから素面の時にゆっくり話そうという選択肢は全くない。うつむいて談志は黙って考え込んだ。誰一人言葉を発するものはいない。立ったままの真打は涙ぐんでふるえていた。(中略)「夢金なら俺の方が上手い」と云った真打は勿論馬鹿ではない。誰もが認める技量の持ち主で、しかも夢金は彼の十八番とされている、だからこそ、あえて「夢金なら俺の方が」と根多限定で叫んだ想いの重さに、談志がどう応えるか、全員固唾を飲んで見守っていた。
実際には一分足らずの時間だろうが、談志が黙っている間がとてつもなく長く感じた。

「あらゆる角度から考えてみたが……」
つぶやいた談志の口元を全員が注視する。身体全部を耳にして聞きもらすまいと身を固くする。談志は何と云うのか。緊張の一瞬。
「俺の方が上手い」
ボソッ云った。


このシンプルかつ最善の回答をできるだろうか。空気に思考を侵されないというのは、人間の愚かさを認めた上ではじめてできることなのかもしれない。


赤めだか赤めだか
(2008/04/11)
立川 談春

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おまけ。
最近読んだ漫画。粋な男たちが出てきて、歌舞伎らしい落ちがつく。なんとなく「赤めだか」と同じカテゴリにいれてみたくなった。浮世絵師・歌川国芳の話。サッパリした読後感。

ひらひら 国芳一門浮世譚ひらひら 国芳一門浮世譚
(2011/11/29)
岡田屋 鉄蔵

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