だいたい47度

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50光年を光速で移動すると何年かかる?

「20歳の人が光速に限りなく近い速度のロケットに乗り、地球から50光年離れた場所に着いた時には何歳になっているだろうか?」
ニュートン力学においてはこの問題の解は70歳強であるが、相対性理論によれば解はもっともっと若くなる。

特殊相対性理論の基本について簡単にまとめてみよう。

ガリレオ・ガリレイは「絶対運動はない」と説いた。あらゆる運動は、基準となる物質に対する相対的な運動でしかありえないというのだ。世界の絶対的な基準などどこにある?これは僕らの生活上の認識にもあうため、理解しやすい話だ。このことから考えると、速度というものは誰から観測した時の速度なのかを記述しないと意味がないことになる。

その一方で、マクスウェルの弾きだした光速の式には、発生源の速さも受け手の速さも現れていなかった。このことはガリレオの話とあわないように思われる。この矛盾に対して当初は、エーテルと呼ばれる物質が宇宙を埋め尽くしており、光速はエーテルに対する相対的な速度だと考えられていた。しかし、マイケルソンとモーリーの実験によってそれも否定され、ガリレオとマクスウェルの話は真っ向から対立する形となってしまった。

そこで出てくるのがアインシュタインの特殊相対性理論である。彼は光速は観測者によらず一定であるという仮定をもって思考を始めた。

まず有名な思考実験である光時計実験が行われた。光時計とは、光が距離αだけ離れた二つの鏡の間を上下に反復移動して、その反射回数によって時間をカウントできる時計である。さて、それを持って電車に乗ったとしよう。動いている電車の中で時計を見ていると光が100回往復した。このとき電車の中の人からみると、光は100αの距離を移動したことになる。同時に、電車の外から光時計を見ている人がいるとしよう。その人から見ると、電車の移動に合わせて鏡も移動していくため、光は一回反射するごとにαより長い距離(α+⊿α)を移動することになる。つまり100回往復したときには、100α+100⊿α移動したことになる。

光の速度は観測者によらず一定と仮定しているにも関わらず、観察者によって光の進行距離が変わってしまっている。この問題をアインシュタインはこう解釈した「観測者に対して相対運動する物体においては時間がゆっくり進むように見える」。光速をcとすれば、電車の中の人が100α/c秒と感じる時間を、電車の外の人は(100α+100⊿α)/c秒と感じる。時間も絶対ではないのだとアインシュタインは喝破した。

更にここから面白いことがわかる。電車の外から見て電車が毎秒Xメートル進むとすると、(100α+100⊿α)/c秒後には、(100α+100⊿α)X/cメートルの距離を進むことになる。しかし電車の中の人にしてみれば、この時間は100α/c秒であり、距離的には100αX/cメートルしか進んでない。よって電車の中の人は空間が縮んだように見える。時間も空間も絶対的なものではないのだ。

一般的な入門書だと、特殊相対性理論の解説は上記のような流れとなる。今日読んだ「なぜE=mc2なのか?」という本も先頭の1/3を同様な解説に充てている。この本も物理学をなるべく数式を使わず説明してみようという本の一つである。

しかし、この本の主題は、題名の通り「E=mc2」(質量に光速の二乗をかけたもの=エネルギー)というアインシュタインの代名詞とも言える数式の意味を説明することであり、特殊相対性理論の説明はその前段階に過ぎない。また邦題では隠れてしまっているが、本来の題名why does E=mc2?(and why should we care?)という題名の通り、だから何?というところまで説明を試みており、核分裂・核融合からビッグス粒子、時空の歪みまでを数式を使わず説明しようと企てている。

この本が数式を除いて説明に成功しているか、というと、部分的にのみ成功しているという回答になる。特に、途中までは数式をほとんど除いた形で説明できているにも関わらず、クライマックスの一つであるE=mc2の導出を数式変換に頼ってしまうのは少々残念だった。中途半端な形で数式を導出してしまったため、むしろ説得力にかけるように感じるところもある。

それでも、なるべく数式を使わず説明しようと苦心していることは、丁寧すぎるくらいの書き方に現れている。そのため、物理学の本であるにも関わらずスラスラと読める。同時に、広範囲に関して意欲的に言及している本であるため、近代物理学の地図を頭の中に描くのにはちょうど良い本である。僕も多少知識があるものの宙ぶらりんとなっていた範囲の話について他の領域との関連性がクリアになったし、次に知りたい分野に目星も着けることができた。先日読んだサイモン・シンの宇宙創成 (新潮文庫)の副読本のような形としてもよいかもしれない。


なぜE=mc^2なのか?なぜE=mc^2なのか?
(2011/08/29)
ブライアン コックス、ジェフ フォーショー 他

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